What is "KYOTO" ? WHAT IS ? CONTENTS SINGLE RELEASE MAKING PROCESS H.OKUI COMMENT

『KYOTO』 ※ジャケットデザイン:奥井弘後にあの山下達郎が新曲のタイトルに据えたキーワードを先取り?した「Re-Born - 再生」で健在ぶりを示した洛東UNDERGROUND。さて今回はどんな手で迫ってくるのか?と大向こうが固唾を飲んで見守る中リリースされたのは... その名も『KYOTO』! 世界に名だたる観光都市であり、千年の歴史を誇る古都であり、それでいて先端技術を誇るモノ造りの町。しかし何よりかによりここは洛東UNDERGROUNDのメンバー達が生まれ育った町である。そんな彼らが万感の思いを込めて制作した新作、それが『KYOTO』である。


それにしても大きく出たものである。テーマとしては重すぎるのでは? 雅な和の世界がまったりと展開され退屈してしまうのでは?等いろいろな声が上がる中リリースされたこの新作は、場合によってはあの「私淑の人」を凌ぐ名作だ!という呼び声も高い傑作である。確かに今回はインスト曲が多く収録され雅で和を感じさせる素晴らしい曲も含まれるが、その合間には彼ららしいポップロックを始め、レゲエやパンク、そしてヘヴィメタルな曲まで取り揃えて聴き手は息つく暇もない。リーダー橋本が撮影した写真をデザイナー奥井弘が加工した春めいたジャケットの影には洛東UNDERGROUNDがここまで蓄積してきた様々な要素が潜んでいるのだから、これを楽しまない手はないというものだろう。



ミニアルバム『Little KYOTO』ちなみに『KYOTO』は洛東UNDERGROUNDのメンバー達が愛してやまない主要エリア(と言っても彼らが根城にしている東方面に集中している。さすがの彼らも全域をカバーすることは出来なかった模様)を観光するかのような構成になっている。モダンな京都駅を出発点として鴨川をそぞろ歩き、大原を散策。市中では町家を見学したり本能寺の変に思いを馳せたり... もちろんファーストアルバムで有名となった洋館から水路に沿って彼らが母校・洛東高校に到達する。つまらない観光ガイドなど不要なあたりも『KYOTO』の楽しめるところである。


さらに同時にリリースされるのはミニアルバム形式となった「Little Kyoto」、本編“京都”に対して“小京都”である。一般的には京都の雰囲気を醸す地方都市が自称する表現だが、ここでは文字通り『KYOTO』をさらに楽しめる副産物として注目である。メインは森岡の個性が炸裂する「鴨川縁に座って」のシングル・バージョンだが、これに加えて別バージョンや未発表デモなど全7曲が収められ無視するにはあまりに素晴らしすぎる重要アイテムとなっている。


という訳でもはや理屈抜きのある意味壮大な、またある意味では非常に親近感を覚える洛東UNDERGROUNDが紹介してくれる“京都”... 心ゆくまでお楽しみいただきたい。




Contents Of "KYOTO" WHAT IS ? CONTENTS SINGLE RELEASE MAKING PROCESS KYOTO MAP

まずは収録曲、簡単な曲目紹介を行う。尚、作品通じて基本となるパーソネルは以下のとおり。

 A.Hashimoto .... Vocals / Electric and Acoustic Guitar
 M.Morioka .... Vocals / Acoustic Guitar
 M.Johnan .... Vocals / Bass
 T.Yamaguti .... Vocals / Electric and Acoustic Guitar / Keyboard / Rhythm Programming

1.京都駅 Station (Music By A.Hashimoto and T.Yamaguti)
 A.Hashimoto .... Electric Guitar (Slide)
 M.Morioka .... Mouse Whistle
 T.Yamaguti .... Digital Sax

本作『KYOTO』は軽快なピアノの連打に骨太な上南のベースラインが光るインスト曲でスタートする。山口のデジタルサックス〜森岡の口笛(!)によるメロディに導かれて橋本のスライドギターが炸裂する展開。“京都”というからにはNHKの連続ドラマのようなさりげない曲を予想したリスナーに仕掛ける得意のフェイント... 近代的な京都駅のイメージを余すことなく伝えつつこの後の展開に期待を持たせる強力なオープニングナンバーだ。

2.鴨川縁に座って Central Flow Sitting On (Words By T.Yamaguti / Music By M.Morioka)
 M.Morioka .... Vocal, Samba Whistle, Puff Puff Bugle
 A.Hashimoto .... Electric Guitar (Solo)
 T.Yamaguti .... Electric Guitar

いきなり炸裂するサンバホイッスルに続く各国語のカウンティング... モンキーズあたりを彷彿とさせるビートの利いた演奏からビートルズの「エリナ・リグビー」を彷彿とさせるクラシカルな展開へ。国際観光都市・京都を全面に打ち出して森岡がまたしても提示する堅田サウンドの進化形である。橋本のギターソロ、上南のパワフルなベースも素晴らしい。尚、森岡が曲中たったの一回だけ演奏する“パフパフ・ラッパ”にも注目したい。

3.冷泉通 - 秋 Cold Spring Lane - Red Leaves (Music By A.Hashimoto)
 A.Hashimoto .... Acoustic Guitar (Melody)
 T.Yamaguti .... Acoustic Guitar

橋本の手になる素晴らしいインスト曲。彼が京都で一番好きな場所、とする冷泉通の秋のイメージを織り込んだ楽曲である。淡々と演奏される森岡のエレガットギターのバッキング、時にクラシカルな演奏を下支えするどっしりした上南のベースなど聴き所満載。尚、この曲で橋本は森岡愛用のエレガットギターを借りてメロディを弾いている。一方同時リリースのEP「Little Kyoto」には自身の愛器 Ovation による演奏がナチュラルミックスで収録されており聴き較べていただくのも一興か。

4.三千院 3000 Inn (Words and Music By T.Yamaguti)
 T.Yamaguti .... Vocal / Electric Guitar
 A.Hashimoto .... Electric Guitar (Solo)

なぜかレゲエで展開される“三千院”をテーマにした楽曲。“初夏の大原”が舞台だから、という噂だがあまりひつこくなくさりげなく展開するところは好感が持てる。またレゲエと言いながらも森岡と上南は普通の8ビート表打ちで演奏しておりなかなかユニークな演奏になっている。尚、前半と終盤に同じメロディが挿入されるが、これは“京都議定書”と仮に題されたメロディで、このメロディを使って皆がそれぞれ曲を書く計画だったとのこと。

5.家並を歩いて Walking On Row Of Houses (Words and Music By A.Hashimoto)
 A.Hashimoto .... Acoustic Guitar (Melody)
 T.Yamaguti .... Ukulele

今回、全編を通じて5曲(終曲「あんたはんもおこしやす」を含むと6曲)のインスト曲が収録されている。これはその1曲でまたしても橋本の天才的なソングライティングが冴える楽曲。大原界隈の家並を眺めながら散策する、というイメージで書かれたこの曲は一般的に“京都”ときいたリスナーが思い描くであろうタイプのメロディが用意されており印象深い。かすかに聞こえる森岡のエレガットギター、上南の着実なベースに加えて山口がウクレレを弾いているのが珍しい(楽器は奥様から拝借したらしい)。

6.三日でおしまい Three Days And Over (Words and Music By T.Yamaguti)
 T.Yamaguti .... Vocal / Electric Guitar
 A.Hashimoto .... Electric Guitar (Solo)

いきなりパンク・ロックが飛び出しビックリさせられる。本能寺の変での明智光秀の動機には未だに諸説がある(つい最近も足利家に送られた直筆書簡が発見され話題となった)が、いずれにしても織田信長を討って天下を盗ったものの3日後には農民の槍に突かれて命を落とす、というまさにパンクな展開がRUGを刺激したものと思われる。激しいギターを全面に出した演奏に加え橋本がヴァン・ヘイレンばりのソロを聴かすなど、そろそろまったりした気持ちになってきたリスナーを叩き起こすには最適のナンバーである。

7.町家へようこそ Welcome To Townhouse (Words By T.Yamaguti / Music By A.Hashimoto)
 T.Yamaguti .... Vocal / Acoustic Guitar
 A.Hashimoto .... Electric Guitar (Solo)

橋本の伸びのあるギターソロが聴ける等RUGらしいポップな仕上がりの作品。毎度のことながらキレのない山口のボーカルを全員のコーラスでカバーしている。ちなみに歌詞にある Round, bamb, barbarian, two, push and the pond や Sister, three, hexagon, octopus and gold といった暗号のような単語の羅列は京都に伝わる通り名の歌の歌詞を借用しているとのことなので確認されたし。

8.794ウグイス・タイムマシーン 794 Nightingale Time Machine
     (Version A = Words By H.Okui and Music By T.Yamaguti and A.Hashimoto)
     (Version B = Words By H.Okui and Music By A.Hashimoto)
 T.Yamaguti .... (A) Vocal / Electric Guitar (B) Acoustic Guitar
 M.Morioka .... (B) Vocal
 A.Hashimoto .... (A)(B) Electric Guitar

収録曲がほぼ固まってきた2017年3月、RUGの強力サポータで本作のジャケットデザインも手掛けた奥井弘からのメールが配信される。歌詞を書いてみた、というそのメールを見てメンバー達は多少困惑したようだが、奥井の心意気を買って立派な楽曲に仕上げてみせた。尚、元の歌詞はバージョンAとBの二組だったのでAを山口と橋本、Bを橋本が単独で作曲を行い別々に録音されたが、最終ミキシングで結合された。尚、Aは山口らしいELO風のアレンジ、Bは橋本らしいバラードに仕上がっている。

9.あの水路 That Water Route (Words By T.Yamaguti and M.Morioka / Music By M.Morioka)
 M.Morioka .... Vocal / Harp
 A.Hashimoto .... Electric Guitar
 T.Yamaguti .... Electric Guitar / Synth Bass

“京都”を舞台にする以上、彼らが生まれ育った洛東エリアの登場、さらに言えば“京都山科疏水”の登場は不可避であった。この歌詞に曲を付けたのは森岡。まるでU2みたいだ、と自ら言いながらも迫力のある楽曲に仕上げている。特に“この箇所でギュイイイイイイン、バーン!という激しい演奏を入れるように!”という森岡の指示に対し橋本と上南は七転八倒したらしいが結果素晴らしい効果を上げている。終盤凝ったコーラスが聴けるのも森岡ならでは。尚、元の歌詞は“びわ湖の水を堰き止めたら滋賀県が水没する”という都市伝説が含まれていたが森岡により書き換えられたとのこと。

10.洛東坂 Rakuto Slope (Music By M.Johnan)
 A.Hashimoto .... Acoustic Guitar (Melody) / Electric Guitar (Melody and Solo)
 M.Morioka .... Samba whistle / Cuica
 T.Yamaguti .... Acoustic Guitar

RUGにとって究極の“京都”はやはり彼らの母校(洛東高校)の前を下る“洛東坂”であろう。上南によって書かれた素晴らしいインスト曲は前半ボサノバの雰囲気で橋本のアコースティックギターがメロディを奏でる。また後半は“京都議定書”ミッションに準じてあしらわれたそのメロディを今度はエレキギターを使って表現、これに森岡がクイーカやサンバホイッスルを入れてサンバ風の雰囲気を醸し出している。全編を駆け抜ける上南のベースも特筆。ちなみに本作はスタート時点では京都全域をカバーすべく“伏見稲荷”や“太秦映画村”、“羽束師”などをテーマにした曲が検討されたらしいが結局東側のエリアだけで手一杯となったようだ。

11.魔界の役人 Civil Servant Of Hell (Words and Music By T.Yamaguti)
 M.Morioka .... Vocal
 A.Hashimoto .... Electric Guitar (Solo)
 T.Yamaguti .... Electric Guitar

いかに“京都”がテーマであってもこういうヘヴィな曲が出てくるのがRUGらしい。しかし日中は嵯峨天皇に仕えながら夜になると六道珍皇寺の井戸を伝って魔界に出勤していたという小野篁が主役となればおどろおどろしい展開となるのはやむなしか? いずれにしてもハードロック・ブラザーの橋本、上南にとっては格好の材料でありかなり録音をエンジョイした、という噂である。とにかくおどろおどろしいコーラス?もヘヴィな曲だが、これも立派な京都の一面である。

12.伝統 Tradition (Words By T.Yamaguti / Music By A.Hashimoto)
 T.Yamaguti .... Vocal / Electric Guitar
 M.Morioka .... Vocal
 A.Hashimoto .... Electric Guitar (Solo)

実はこの曲の基本メロディは“京都議定書”のコード進行をベースに書かれている。それに橋本が繰り返しの部分を取り付けた橋本版“京都議定書”ミッションである。ボーカルは近年の作品集には必ず1〜2曲収録される森岡と山口のWボーカル。軽快なロックテンポで途中に転調が入るなど橋本らしい楽曲に仕上がっている。これは染帯、織帯、人形、陶磁器など様々な伝統工芸と最先端の製造技術が共存する京都を歌った曲だ。

13.ゆらり、京都 Kyoto Swaying (Words and Music By A.Hashimoto)
 M.Morioka .... Vocal
 A.Hashimoto .... Acoustic Guitar (Solo)
 T.Yamaguti .... Acoustic Guitar

日本語の歌詞も橋本自身が手掛けている。祇園祭の効果音から導入される非常に“京都”らしい楽曲である。当然ボーカルは森岡が担当、じっくり歌い込まれたその味わいはまさに絶品。演奏をしっかり支える上南のベースも心強い。さらにギターソロはダブルトラックによる録音。二本のギターで奏でられる美しいメロディに心が洗われる。大きなテーマ“京都”のハイライト・ソングとして後世に残る名曲である。

14.冷泉通 - 春 Cold Spring Lane - Cherry Blossom (Music By A.Hashimoto)
 A.Hashimoto .... Acoustic Guitar (Melody)
 T.Yamaguti .... Acoustic Guitar

こちらも橋本の手になる素晴らしいインスト曲。彼が京都で一番好きな場所、とする冷泉通の春のイメージを織り込んだ楽曲。秋バージョンに対してこちらはメロディが力強く響く。森岡によるバッキング、上南のベースも揃って力強い。これもまた橋本が生み出した名曲のひとつとして記憶されるに違いない。尚、作品集『KYOTO』を考えた時、当初はこの春バージョンで始まり秋バージョンで終わる、という構成が考えられたが明るく力強く終わりたい、という山口の意向が優先され秋→春の順になったとのこと。

15.あんたはんもおこしやす As For The Next, You Come Too (Music By 洛東UNDERGROUND)

蛇足的な一曲。橋本が苦労して録音した効果音を活かすべく収録されたという説が有力。とは言えこの効果音は出発ではなく新幹線が京都に到着する時のものだが? こんな風に貴方も来て下さい、という彼らからのメッセージが“京都議定書”のメロディに乗って流される、という風に考えておけば良いだろう。それはそれで心地良い余韻であり、それとともに作品集『KYOTO』は終了となる。

EP "Little Kyoto" (featuring Central Flow Sitting On) WHAT IS ? CONTENTS SINGLE RELEASE MAKING PROCESS KYOTO MAP

作品集『KYOTO』リリースと同時にEP仕様のシングル「Little Kyoto」もリリース。以下にこちらの簡単な紹介を。

1.鴨川縁に座って Central Flow Sitting On (Single Version) (Words By T.Yamaguto / Music By M.Morioka)
 M.Morioka .... Vocal, Samba Whistle, Puff Puff Bugle
 A.Hashimoto .... Electric Guiar (Solo)
 T.Yamaguti .... Electric Guiar

基本のトラックは本編収録バージョンと同じだがエレキギターのバッキングのミキシングが異なる他、ギターソロも別のテイクを採用しているように思われる。****

2.冷泉通 - 秋 Cold Spring Lane - Red Leaves (Ovation) (Music By A.Hashimoto)
 A.Hashimoto .... Acoustic Guitar (Melody)
 T.Yamaguti .... Acoustic Guitar

橋本の素晴らしいインスト曲の別バージョン。本編では森岡のエレガット・ギターを借りてメロディを弾いていた橋本が、ここでは愛器 Ovation で演奏している。デモ的なテイクのようだが完成度が高い演奏である。また基本生演奏を主体としたミキシングになっているあたりも含めて本編と聴き比べすることをお勧めしたい。

3.舞妓はん Appremtice Girl (Demo) (Words and Music By T.Yamaguti)
 T.Yamaguti .... Vocal / Acoustic Guitar

本編未収録のデモ・テイク。山口がボーカル、2本のアコースティックギターを単独で録音しており他のメンバーは録音に参加していない。作品集の構成を検討した結果、没になったと思われるシンプルな作品。

4.来迎院 Coming/Greeting Inn (Music By A.Hashimoto)
 A.Hashimoto .... Electric Guitar (Melody)
 T.Yamaguti .... Electric Guitar

本編収録の「三千院」からギターソロ部分を抜き出し再構築したサウンド・コラージュ的な作品。そんな関係からか大原・三千院のさらに奥にある来迎院(らいごういん)と命名されている。またメロディはギターが奏でる部分だけのため作曲者は橋本となっているようだ。

5.家並を歩いて - 北山 Walking On Row Of Houses #2 (Music By T.Yamaguti)

こちらも本編未収録のデモ・テイクで山口がピアノとシンセサイザーで録音している。橋本が書いた大原の京都らしい風景を描く「家並を歩いて」に対するアンサーソング?で京都の高級住宅街のひとつ北山を取り上げているらしい。しかし小学生のピアノ練習曲みたいだ、として没になったという噂。

6.三日でおしまい Three Days And Over (Orchestra) (Words and Music By T.Yamaguti)
 T.Yamaguti .... Vocal / Orchestra Arrangement

パンク・ナンバー「三日でおしまい」のオーケストラ・バージョン。ボーカルとコーラスは本編のトラックをそのまま利用しながら他の音源はごそっとオーケストラにすり替えている。お遊び的なテイクとして聴くとおもしろいかもしれない。

7.冷泉通 - 春 Cold Spring Lane - Cherry Blossom (Demo) (Music By A.Hashimoto)
 A.Hashimoto .... Acoustic Guitar (Melody)

本編でも実質上トリを飾った楽曲のデモ・バージョン。橋本自身がアコースティックギターのメロディとバッキングを多重録音している貴重なテイク。従って他のメンバーは一切演奏に作家していないが、やはり良い曲はどんな形で演奏しても素晴らしい、ということが良く判るテイクである。やはりこの曲を聴くためだけでもこのEP「Little Kyoto」を揃えておく理由になってしまうあたり、RUGのマジックと言えるだろう。

Making Process Of "KYOTO" WHAT IS ? CONTENTS SINGLE RELEASE MAKING PROCESS KYOTO MAP

『KYOTO』制作の軌跡。

2015/09/20
この日、山科京極にあるもつ鍋の店“亀八”でRUGメンバー4人による会合が行われた。この時点で録音中だった作品集「Re-Born - 再生」の収録曲およびシングルリリース曲の決定がメインテーマだったが、この時の橋本による内部報告に“しかし今回はさらに重大な決定がされましたねー。次回のアルバムタイトルは「京都」ですかー!! こりゃまた大きく出たものですが、テーマが大きくもやり甲斐のありそうなタイトルですねー。また共に楽しみましょう!”と記載されている。誰が言い出したかは定かではないが『KYOTO』誕生のきっかけはこの日にあったとみて間違いないだろう。

2016/04/23
この日、山科ブライトンホテルの下の竹取御殿という店でRUGメンバー4人による会合が行われた。多少の遅れがあったものの無事作品集「Re-Born - 再生」がリリースされた後のタイミングである。内部報告には“そしていよいよ次作は『KYOTO』です”という記載があり、この日が事実上のキックオフであったと思われる。

2016/05/01
この日、橋本が山科スタジオを訪れ次作『KYOTO』に向けての新曲発表を行った。新曲は2曲で「冷泉通 - 春」と「冷泉通 - 秋」。尚、「Little Kyoto」収録の「冷泉通 - 春」デモ・バージョンはこの時のものと推測されるが真相は明らかではない。

2016/05/29
この日、森岡から山口のメールアドレスに送信が行われた。メールには山口から歌詞が回付されていた「鴨川縁に座って」の発表音源、コード表、なぜかサンバホイッスルの画像が添付されていた。尚、山口によって下音サンプルが作成され音源置き場にアップされたのは6月5日である。

2016/06/18
この日、メンバー達が業務連絡に使用しているfacebookのメッセンジャー“RUGの密談”に上南より投稿があった。ご両親の体調が思わしくないためしばし休業したい、という内容だった。早くも暗雲立ちこめる『KYOTO』であったが、上南の復帰まで他のメンバーで出来ることは出来る範囲で進めておく、ということが申し合わされる。

2016/07/17
橋本が再び山科スタジオを訪れ新曲発表を行う。「京都駅」「町家へようこそ」そして橋本が以前より童謡みたいな曲等と言っていた「京都、ゆらり」の3曲が発表された。

2016/08/13
RUGの強力サポータ、奥井弘が帰省。上南は不参加であったが他の3名を被写体にして鴨川縁でジャケット撮影が行われた(この時の画像がEP「Little Kyoto」に使用されたと思われる。またこの後、山科京極のあずきでお盆の会を開催)。またこのあたりからどさくさに紛れて課題曲の下音がメンバー専用音源置き場にアップされ始める。

2016/09/19
山口邸にて臨時会合。この日は上南も参加、近況報告も行われた。また橋本より新曲「家並を歩いて」が発表され第一期課題曲が全て出揃った。

2016/12/04
紆余曲折を経ていよいよ『KYOTO』の録音が開始された。この日は山科スタジオに森岡と山口が集まり「京都駅」「町家へようこそ」「京都、ゆらり」「鴨川縁に座って」の録音(ボーカルとバッキング。「京都駅」はデジタルサックスと口笛のメロディとバッキング)を敢行。尚、当日はサンバホイッスルの音が鳴り響き近所から苦情が出た?という未確認情報あり...。

2016/12/30
山科ブライトンホテル内の白木屋で開催された忘年会を前に橋本が山科スタジオに現れた。苦労して録音した新幹線が京都駅に到着する直前のアナウンス音源をダビングするためらしい。

2017/01/21
通常録音は森岡・山口の歌唱隊が先行しそれに橋本・上南の演奏隊が追随する、という形で行われるが今回は上南が休業していること、さらにインスト曲が多いことがあって橋本と森岡が最初の録音を行う、という珍しいパターンが出現。この日は「冷泉通 - 春」「冷泉通 - 秋」「家並を歩いて」の3曲の録音が行われた。

2017/02/11
この日山科スタジオに上南の姿があった。ついに戦線復帰した上南は、これも珍しい山口との録音。「冷泉通 - 春」「冷泉通 - 秋」の2曲が録音され共にこれにて完成となった(インストのためコーラスの工程がない)。また橋本が遅れて現れ「家並を歩いて」を録音し直す。

2017/03/05
この日は通常の演奏隊の録音。山科スタジオには橋本と上南が顔を揃え「京都駅」と「町家へようこそ」を録音。これで「京都駅」も完成リスト入りとなる。またこの日上南はワインレッドのジャズベースを演奏していたが、この日はダダリオのセミフラット弦を張って臨んだとのこと。

2017/03/17
第二期課題曲のラインナップもほぼ完了(第一期で放置されていた山口ソング3曲、いずれもまだ発表すらされていないが他の3人の“京都議定書”ミッション3曲)、『KYOTO』の全貌が見えてきたこの日、突然奥井よりメールが入る。曰く“突然ですが、こんなんつくってみました”として「794ウグイス・タイムマシーン」の歌詞が記載されていた。たちまちこの歌詞は熱狂をもって迎えられ、翌日一部改訂された歌詞が来た時には山口が曲を付けた音源を音源置き場にアップしている(ただし未完として続きを橋本に依頼)。

2017/03/19
月一ペースで快調に突っ走る上南がこの日も山科スタジオを現れ山口との録音を実施。この日は一曲きりの録音で「家並を歩いて」が完成となる。尚、この曲で山口はウクレレを演奏(尚、この日を境に山口は左手の中指が不調となり長患いに突入した。またこの日あのチャック・ベリーが亡くなった、という情報が飛び込んできた。90歳とのこと)。

2017/04/15
この日橋本と上南が演奏隊としての録音を山科スタジオで行った。この日は第一期課題曲の最終録音で「京都、ゆらり」「鴨川縁に座って」を録音。さらに“京都議定書”ミッションに基づいた新曲「伝統」の発表も行われた。また内部報告には新緑の会の話題も上がっており『KYOTO』が順調に仕上がっていることを表している。

2017/05/06
この日山口が上南邸を訪れ上南の新曲を取得した。新曲は“京都議定書”ミッションであるインスト曲。上南はこれを「洛東坂」と名付けた。すっかり復帰した上南は“『KYOTO』も後半戦ですね。やはり6月から2曲づつ、という感じで...”と前向きな意志を表明している。

2016/05/18
この日、森岡から山口のメールアドレスに送信が行われた。内容は“京都議定書”ミッションを遂行した結果完成した「あの水路」の発表音源である。尚、その前に何やら反省文めいたメールが送信された、という噂もあるが山口の問題も多分にあるのでそれで相殺になったらしい?

2017/05/26
この日、facebookのメッセンジャー“RUGの密談”に橋本より投稿。“皆さんこんばんは。楽しい会話の中、私からの悲惨な連絡事項です。副業先ノースリバー社は昨日をもって終わりました。倒...” かくして突然の休業宣言が行われメンバーの間に衝撃が走った。だが上南の時と同様、他のメンバーで出来ることは出来る範囲で進めておく、ということが申し合わされる。

2017/06/25
その方針どおりこの日山科スタジオに森岡、山口が集まり半年ぶりに歌唱隊の録音を実施、「三千院」「三日でおしまい」「あの水路」「洛東坂」「伝統」を録音。森岡曰くこの日の“ボーカルやギターは当然としてハープあり、クイーカあり、サンバホイッスルあり、となかなか盛りだくさんな内容”を休業中のリーダーに捧げる、とのこと。

2017/07/16
永らく姿を見せていなかった橋本が山科スタジオを訪れ「794ウグイス・タイムマシーン」のメロディを発表(バージョンAの追加分およびバージョンB)。その後、山科京極を下ったところの串勝六角屋にて開催された橋本を囲む会に出席、復帰のメドが立ちつつあることを報告した。

2017/08/12
この日、久しぶりに山科スタジオにて橋本と上南が顔を揃える。久々に復帰の演奏隊録音はレゲエの「三千院」とパンクの「三日でおしまい」を録音。また橋本より社会復帰は9月1日からの見込み、という発表が行われた。

2017/08/27
この日は森岡と山口が山科スタジオにこもり歌唱隊の最終録音に挑んだ。森岡が強烈な個性を発揮した「魔界の役人」、奥井の歌詞から誕生した「794ウグイス・タイムマシーン」のバージョンAおよびB、さらに「鴨川縁に座って」の各国語カウントの再録音(元の録音ではタイ語がなかったがやはりこれは必須であろう!ということで)。また時を同じくしてfacebookのメッセンジャー“RUGの密談”に橋本のメッセージが投稿された。“ちなみに私事ですが9月1日から再びワーカーズ復帰となりました。まぁー頑張りますので今後とも宜しくです。再び黒いものも白です!って言ってみせます!”。

2017/09/24
この日は社会復帰を果たした橋本と上南が山科スタジオに入り演奏隊録音を実施。「794ウグイス・タイムマシーン」のバージョンA、「洛東坂」そして「あの水路」を録音。この調子で演奏隊最終録音を10月に!という勢いだったが、何分新入社員で休日に出張がある、という橋本の状況を勘案、次回録音は11月2週目以降を予定することとなる。尚、次作のタイトルは『KYOTO』だーっ!と言い出してから早2年の歳月が流れた...。

2017/12/2
演奏隊最終録音。気が付くと前回から2ヵ月以上が経過していた。内部資料によると“「伝統」を皮切りに「794ウグイス・タイムマシーン」のバージョンB、そして恐るべき「魔界の役人」で締めとなりました”という橋本の報告が確認される。尚、上南は朝から洗濯物を干すなど家事に追われ十分練習が出来ていない中の録音だったようである。しかしいずれにしてもこれで全曲がコーラス待ちとなった。一時は年内完成か?という声があがるなど完成まであと一息である。

2017/12/30
結局、年内にコーラス録音が行えないまま椥辻にある居酒屋ひがもにて忘年会が開催された。その際、1月の日程調整が行われたが、最近土日基本休みとなっていた勤務がまたフェイント化してきた森岡、新副業先に出張は出来ない!と言っていたにも関わらず出張が連続して入ってしまった橋本の予定が上手く合わないためコーラス録音は2月にずれ込む見通しとなった...。

2018/02/12
散々苦労して調整した結果、月曜祝日(建国記念日の振替休日)についにコーラスの録音が実施された。お母様が入院され参加が危ぶまれた上南も満を持して参加、インスト曲を除く全10曲の怒濤の録音が実施された。大半は山口の安易な案に基づいて進められたが、森岡の2曲(「鴨川縁に座って」「あの水路」)はやはり森岡の思い入れがあり相応の時間をかけての録音となった。しかしこの日ですべての録音が完了。前作「Re-Born - 再生」完成からほぼ2年経過。お疲れ様でした。

KYOTO Map - Let's Enjoy Tripping Around KYOTO ! WHAT IS ? CONTENTS SINGLE RELEASE MAKING PROCESS KYOTO MAP

今回RUGが描いた『KYOTO』の旅とは?

RUG KYOTO MAP  まず京都の玄関口、京都駅であろう。千年
 の歴史の町に似つかわしくないモダンな建
 物。新旧が入り乱れて共存する京都ならで
 はの先進的インストを聴いて下さい。

 お次は鴨川縁を歩きましょう。世界に名だ
 たる観光都市、京都。世界各国の言葉が飛
 び交うのである。

 鴨川縁を北上すると冷泉通に出る。我らが
 リーダーがこよなく愛するこの通の秋の風
 景。天才だけが書けるメロディ。

 とりあえずバスに乗って大原へ。初夏の柔
 らかい陽射しを浴びる三千院になぜか流れ
 るレゲエのリズム。さらに大原の古びた家
 並を散策すれば哀愁のメロディが聴こえて
 くる... これも京都の風景。

 再びバスで中心地に戻り蛸薬師小川へ。ひ
 っそり立つ石碑がここに本能寺があったこ
 とを示す。パンクロックで聴く明智光秀。
 そしてそのあたりをぶらぶらすればあちこ
 ちに点在する町家が。耳を澄ますと京都通
 り名の歌と一緒に地蔵盆の数珠回しの音が
 聞こえたような気がする。

 京都は幾多の戦国を経験した町でもある。
 都大路に響くポップ&スローな鬨の声。


 中心地から地下鉄で御陵下車。天智天皇陵を上がるとそこはびわ湖の水が流れる水路。切実に訴える魂のボーカルを聴きながら水
 を堰き止めたら滋賀県は水没するのか?と思う。そしてステキなボサノバのリズムに乗って洛東坂を下っていく。曲はいつしかサ
 ンバの雰囲気に...。

 山科駅から地下鉄に乗って東山へ。目的地は六道珍皇寺。井戸から聞こえるハードロック。本当にここを通って魔界に出勤した
 役人がいるのか? 岡崎エリアを歩きながら体験する京都の伝統産業がポップなサウンドに煌めく。だが一方では世界に誇る先
 端技術をウリにしているのも京都なのだ。

 もう時間は夕方。梵鐘の音に誘われて入った寺の境内に聴こえるフォークソング。これも学生の町、京都らしい。そして再び冷
 泉通にやってきた。季節は一転して春。弾けるメロディが楽しかった一日を締めくくるかのようだ。さああんたはんもおこしや
 す、京都へ。


ご拝読、ありがとう。では中身の方もお楽しみ下さい。